「春を知らせるフキノトウ」
幼稚園で春探しをしていたある日、きょうかちゃんはお家の近くで、だいちゃんは園庭で、それぞれに「フキノトウ見つけたよ」と、瞳をキラキラさせて教えてくれました。それは先日、白樺の命が深い雪の中じっと耐え続け、命の水を吸い上げるすごさを実感したからこそ、「フキノトウも」と思ったからに違いないと感じました。だけど、フキノトウは草なのか花なのかという疑問が子どもたちにあり、私は早速図鑑絵本を持ち出し、子どもたちと調べることにしました。よく見ると「春を知らせる花」は、園庭のいろいろなところから顔を出し、咲いていることがわかりました。ままごとに使ったり、香りをかいで、その臭さにびっくりしたり、手に汁が付き、手が臭いと言い合ったり、本物に出会わなければ感じられない感触と香りに驚き合ったのでした。
お部屋にフキノトウを飾りみんなで愛でていましたら、園長先生が「食べられるよ」と言いました。りくくんが「食べられるみたい」と言っていたことが、確信となり、早速、フキ味噌作りの計画が始まりました。園長先生に教えてもらった通り、交代しながらみんなで味噌を練りました。幼稚園中が甘い味噌の香りでいっぱいになりました。私は、ご飯を炊いてフキ味噌ができたら、すぐにおにぎりにして味わわせたいと考えていました。ご飯の炊ける香りが加わって、わくわくで幸せで、みんなが自然に笑顔になってしまう時間でした。
ラップに熱々ご飯をのせてお味噌をつけて、自分でおにぎりにします。「おいしい!」「苦い!」「おかわり!」「苦手!」いろいろな声が飛び交いましたが、全部いい。初めてのことは、やって見なければ分かりませんから、体験が大切です。苦手でも、大人になって食べられるものもあっていい。今、体験するということが大切なのです。
みんなで食べても、お味噌はいっぱい残っています。そこでみんなに投げかけました。「このお味噌どうする?」
「お母さんにプレゼントしたら」とけんと君。「いらっしゃいませしたらどう」とかのんちゃん。「ママたちのフリーマーケットみたいなやつかい?」おいしいものを作って売っているママたちのお店のことがつながっていき、話が弾みました。
一年を通し、保護者の皆様に協力をいただきながら、相談する 作る 売る と言うことを子どもたちに実際に経験させ、社会の仕組みを実体験を通しながら学びとらせていきたいということは懇談会でもお話させていただいた通りです。
ここからは、懇談終了後からのお話しです。「残りのフキ味噌をどうするか」の話し合いを改めて行いました。子どもたちの気持ちは、すでに「お店屋さんをしたい」という気持ちになっており、出てくる考えは、お店をする方法でした。懇談でもお話しさせていただきましたが、お陰様で、こひつじ幼稚園では、保護者の皆様の手作りフリーマーケットが開催されます。そのために、たくさんの日々を幼稚園のために注いでくださる保護者の活動を子どもたちは十分知っています。そして、本当のお金を使うその日を楽しみにします。子どもたちはそのことを自分ごとに重ねたのです。改めて今、再び保護者の活動に感謝の気持ちが溢れました。
ゆりのフキ味噌屋さんの具体的な相談が始まりました。マママーケットやお店屋さんのことを思い出しながら、パッケージ係り、看板係り・お手紙係・地図係・レジ、袋作り係・銀行係と様々な係りが子どもたちから生まれました。「フタがついている入れ物に入れたらいいよね」とちさきくん。「プラスチックのね」とあいなちゃん。イメージがどんどん広がり、わくわくな気持ちが広がりました。
そして次の日。いよいよ準備のはじまりです。パック係りは、ビニール手袋にマスクをして、真剣です。
「休憩します」と声が響き、席が空くと係りではない子も率先して手伝います。ホールで遊んでいる子に「休憩しますから手伝ってくれる人いませんか」と呼びかける子がいます。「俺、手伝ってくる」と学級に走ります。自分の係りではない子たちが好きに遊んでいるよういて、実は進行具合や手伝いを気にしていることがわかります。80個のフキ味噌パックができました。
地図や看板、お手紙も、一生懸命書きました。手紙は島田さんが印刷してくれました。全クラスに配られました。ポスターは、玄関にも掲示されました。ママのフリーマーケットと同じです。金額は、いろいろな金額が提案されましたが、50円と決めました。「50円は、穴が開いている50円玉が一つか茶色い10円玉が5つ。2つ買ったら銀色の100円」と、お金の勉強もしました。開店時間は金曜日の朝9時05分と決めました。全部の準備が終わった子どもたちは、明日を待つだけです。「遅れないように登園しないといけない」ことを早口で園長先生に行っている子がいました。「おばあちゃんにも言わなくちゃ」と言って帰る子もいました。
さて開店の朝がました。快晴です。みんなは心なしか早い登園でした。開店準備が始まりました。開店時間が近づいています。ゆり組のベランダにお客様が集まっています。
9時5分「開店しまーす」という合図で、どんどんお客様が買いにきましたからお店は大忙しです。どんどんレジスターにお金が集まってきますから、レジ係もびっくりです。袋にフキ味噌を入れ、シールで止めてお客様にお渡しし、お金をもらうのですから、大忙しです。
保護者の皆様のご協力により、フキ味噌パックは80個完売です。
そして、子どもたちの心に少し余裕が出てくると、「ご飯にのせるとおいしいですよ」「おにぎりに付けるとおいしいですよ」と、食べ方の宣伝もしているではありませんか。張り切って言っていた子のひとりは、みんなでおにぎりした時に「苦手だ」と言った子でしたから、子どもって楽しい生きものだとつくづく思いました。フキ味噌屋さんは、大盛況で閉店しました。
学級に集まった子どもたちは、みんな達成感に満ち、少し興奮していました。その後、銀行係が売り上げを慎重に数え、集計してくれました。3,700円。早速、島田銀行に預けることにしました。島田さんは、ゆり組のために通帳を作ってくれていました。島田銀行と書いてありました。そこに金額をもう一度確認してもらい、通帳に記入されました。子どもたちは学級に集まり、一人ひとり通帳の記入金額を確認しました。この仲間で頑張ったのだという思いが高まりました。みんないい顔でした。子どもたちの瞳が輝きでいっぱいです。自分たちで力を合わせ、働いて儲けたお金ですから。
そうして、「開店祝いと完売パーティー」が始まりました。みんなで、まりあちゃんの好きなクッキーを手に高く掲げ、「カンパーイ!!!!」と言い合って、食べました。
週が明け、月曜日。朝のお店で買えなかった方の予約分の350円が加わり、合計4,050円、なぜか50円多い会計(おつりか、品物をお渡ししてなかったらごめんなさい)となりましたが、再び島田さん銀行へ行きました。
お家の人たちの感想を伝え合いながら振り返り、大成功であったことを確かめ合いました。
売るまでに、いろいろな役割があること、仲間が必要なこと、お客さんを集める方法など、様々な学びがありました。初めてでしたのでドキドキの子もおりましたが、このような経験を重ねる中で、様々な係りを分担し合い、助け合い学び合うという経験をさせ続けていきたいと考えています。
心から、ご協力に感謝します。お母さんの口コミもありがとうございました。是非、感想をお聞かせください。