いつも、幼稚園の教育にご理解とご協力をありがとうございます。
また、先日は急な日程にも関わらず、『運動遊びの会part.2』にご参加いただきありがとうございました。子どもたちは、身体を動かす楽しさを味わうだけでなく、自分の力を信じて、目標を定めて頑張ろうとしたり、リレーの中では、失敗も経験しながら、自分と仲間の力を合わせようと、互いの思いを言葉で出し合いながら相談を重ね、『仲間』を味わってきました。年長だからこそ育ちあえる姿でした。
教師は、その『仲間』をさらに深めていき、自分は『仲間の中の大事な一人なのだ』ということを実感させたいと願い、新たな活動を投げかけていきました。歴代のゆり組も、試行錯誤をしながら目的に向かい、『みんなで』を存分に味わってきたピザ窯は、今年のゆり組の記憶にも残っていて、「私たちもピザ窯を作ってピザを食べよう！」ということになりました。みんなで決めたこの目標に向かって、子どもたちがどのように動いていくかを見守りながら、多くの学びがあるようにと願い、大切に支えていきました。しかし、いざ活動が始まっていくと、『仲間と力を出し合う』どころか『他人事』の子が沢山いました。
数人で作っていき、ピザの試し焼きをする頃に「手伝うよー！」と集まった人たちに、それまで一生懸命作っていた子どもたちは、「みんなの目標だから、今手伝うっていうのは違うと思う」「どうして窯を作りに来なかったのか」「そういうのを人任せというんだ」と、訴えていました。私は「これは揉めるぞ～」と、心の中でニヤリとしました。この出来事から、上記のように『仲間の中の大切な自分』を知る学びのチャンスと捉え、うんと揉めてもいいと思ったのです。
このまま仲間として受け入れてもらって、すんなりとピザを焼いてもらって、「あ～美味しかった」というだけでは、心の学びはなかったでしょう。沢山心を揺さぶっていき、『仲間』とはどういうものなのかを本当に知り、その中でどういう自分でいることが良いのかと考え、『仲間の中にいる自分の責任』を知る、そんな経験をピザ窯を通してどうしても学ばせたかったのです。この学びは、これからの人生にかかわることだとも思いました。
ピザ窯はどうするのか、本当に作ろうと思っているのか、子どもたちは何度も話し合いの時間を作りましたが、なかなか思いは出てこず、「仲間と決めた約束のはずだったのに、『みんなでやる』という気持ちが一つではない」と気が付いた女の子の決断で、ピザはもうやめよう、ということになったのでした。泣きながらレンガの片づけをして、「思ってること、本当はあった。言えばよかった」という子が何人もいました。ここでもまた、ゆり組の子どもたちは、自分の思っていることを言葉で伝えることの大切さを思い知らされたのでした。
窯の片づけが終わった後、ゆり組のみんなで、いろいろなことを言い合いました。「これからは力を出し合える仲間になりたい」「自分のことはちゃんと言葉で言える人になりたい」「人任せではない仲間がいい」「もし、これからまた仲間になれたなら、その時はもう一回ピザ窯を作ろう」などなど、子どもたち一人ひとりが、自分の言葉で思いを伝え合い、「神様は私たちに明日をくださるのだから、その明日を明るく生きていこう」「失敗は成功の基だ！」と前向きに心を整えたのでした。長い長い時間でした。長い長い苦しい日々でした。
お母さんたちの中には、「家ではあんなに考えてたのに、言えなかったんだ、、、」「子どもがすごく楽しみにしていたから残念」と、がっかりしたお母さんもいたかもしれません。ですが、今は、言えなくても良いのです。すんなり実現しなくても良いのです。すんなり楽しいことにならない方がむしろ良いのかもしれません。この幼児期に心の底から失敗し、葛藤を味わう経験を重ねることこそが、子どもたちにとって本当の学びであり、人生を強く生きていく糧になるのだと思います。そのために、幼稚園は、教師たちは、日々、ひとつひとつの出来事を丁寧に学び取らせようと、子どもの心を揺さぶります。
その後のゆり組は、たんぽぽ組が仲間で力を合わせているキャンプごっこを見ては落ち込みながらも、「次こそはみんなで何かするぞ！」「楽しいことはないかな！」と、明るく、前に進んでいます。
針と糸で自分で作ったウサギの人形のごっこ遊びは、いろんな表現が生まれ、子ども同士の豊かな関わり合いがあります。虫や自然事象について調べて発表し合ったり、ゆり組のギネスブックを作ろう！と何やら面白い企みをしている子どももいます。日々の遊びを盛り上げながら、また、仲間同士で目的を見つけ、動き出していけるように、精いっぱい支えていきたいと思います。「私たちの好きなこと」では、そんなゆり組の日常の一コマをお見せしますね。お楽しみに！
つらく、苦しい経験もありますが、楽しく学びの多い残りの日々にしたいと思っておりますので、子どもたちの、幼稚園の、応援をよろしくお願いいたします。
