子どもの育ち(NO.5)

 このところは、どのクラスも夏祭りの出し物について考え合い、昔、子どもが作ったステージを園庭に出し、色々な発表ごっこが展開していました。年長の踊りに刺激を受けて、年少児がいつも楽しんでいる年少児らしい踊りを披露し、満三歳児が真似して踊り、年中児がずっと楽しんできたお化けの変身ポーズをステージ上で表現したりしていました。先生方も、精一杯身体を動かし、ハツラツとしている様子に、私の中で、夏祭りが大変楽しみになっていました。
夏祭りの前日、預かり保育の終わり頃、私はハシゴに登ってホールの壁のペンキ塗りをしていましたら、カラー積み木を上手に使ってステージを作り、8人ほどの子が発表ごっこをしていました。作ったものをそれぞれが思い思いに発表した後、年長児のひびなちゃんが、「歌をうたいます」と一人、ステージに立ちました。始めは、ペンキ塗りをしながら聞いていましたが、あっという間に惹き込まれてしまいました。今思っている気持ちをまるでアイルランドの民謡のような旋律に、言葉を乗せて歌にしているのです。お客さんも、静かに聞き入っていました。

「せっかく生まれたたんぽぽの綿毛の下には、タネが付いているのです。これは命のタネです。好きに飛んで行ったところで、お花が可愛く咲くのです。神さま、ありがとう」

と静かに歌が流れます。それを聞いたことくんが、自分に言い聞かせるように「そんなに恥ずかしいことじゃないよ。僕も歌えるよ。恥ずかしくないよ」と呟き「僕は座って歌います」と、あぐらをかきました。(まるで、加藤登紀子のようだと思いました)ステージの下で、みんなが注目しています。私もハシゴの上から注目しました。やはり、アイルランドの民謡のように歌い出しました。

「一人では生きられません。だから、神さまは僕にお父さんとお母さんをくれました。だから精いっぱい生きることがいいのです。人生にいろいろなことがありますが、それは神さまが教えてくれるんです。お花も人間もみんな精いっぱい生きるのです。神さまに感謝して」

少し長いそのような歌でした。みんな最後まで聴き入り、拍手を送っています。私は、二人の歌に感動し、泣きそうになりました。子どもたちの心の中に、自分たちに何が大切で、何に感謝して生きていくのかが、はっきりと見えていると思ったからです。こんなに、内面が成長してきたのかと驚きもしました。たった生まれて5年の子どもの人生でつぶやく、心の歌です。
一学期が終わりました。お母さんを振り返りもせず、玄関に足早に入り、思いのままに自由を楽しむ2歳児。パラパラとした人間関係から、少しずつ人とつながって、3歳みんなで発表する年少から、仲間外れをして、意地悪のオンパレードをしてみて、その度に自分の心を見つめ直し、自分の在り方を探った年中組、いつもいつも目的をもち、仲間と自分を発揮することの心地よさを楽しみ、一つ一つ達成感を味わい、仲間の間違いを本気で指摘し怒り、正しい道を探ろうとする年長組でした。ある年長の保護者が、成長の喜びを伝えてくださいました。「先生、この一学期本当に育ちました。先生は、育つって言ったけれど、こんなにも心が育つなんて」と。それは、私たち教師への励ましでもあります。私たち教師も、どうしたら伸ばせるか、この子にどのような遊びがあれば内面の手助けができるのかと、日々闘ってきましたから。目に見えてできなかったことができるようになることの喜びも必要な喜びですが、私たちは、友だちとかかわりながら子ども自身が自分の存在する意味を感じ、神さまからいただいた愛を人のために使い、精いっぱい自分を生かし、神さまに感謝できる子どもに育てていきたいと願っています。まさに、ひびなちゃんとこと君の歌のようにです。

もう一言加えるならば、私は、「自分を好きになれる子」を育てることの重要性をお伝えしたいです。もって生まれた性格や素質、能力はなかなか変えることはできませんから、自分が好きという感情を育ててあげることがとても重要です。それはピアノが上手とか、算数ができる等、何かがよくできるということで自分を好きになるというのとは違います。
どんなにいろいろなことができるようになってもその子を心から愛してあげる人がいないと子どもは自分を好きにはなれません。大事なのは親から実感として愛されているということ、幼稚園なら、先生たちから愛されていると実感できること。このようなことを通し、子どもは自分自身を愛してもらえる程度に応じて自分を好きになっていけるのです。自分を愛してもらえる程度に応じてです。
自己肯定感が育っている子は、どのような場面でも堂々としており、人との関係を広げ人の心を包み込む力さえも発揮していきます。幼児期においてもです。こひつじ幼稚園にはそのように育ってきた子どもたちがたくさんいます。

一学期のご協力に感謝申し上げます。笑顔のお母さんがたくさんいます。玄関先で、ワハワハ笑うお母さんがいます。ママクラブの計画を楽しそうにしているママがいます。真剣にお家の相談を涙ぐんで話すママがいます。教師が話す我が子の嬉しい育ちに涙ぐんで聞きいているママがいます。大慌てで登園し、弁当を忘れるママがいます。
どのママも素敵なお母さんでした。いつも幼稚園をお支え下さりありがとうございました。
楽しい夏休みをお過ごしください。

*8月の予定*
26日 2学期始業式 
27日 わくわく広場開始日、つぼみ組学級懇談会、なにぬねのの日
28日 たんぽぽ組、ゆり組学級懇談会
29日 あそびましょ・おはなししましょ、避難訓練(地震)
30日 誕生会