こひつじSnow World(NO.10)

 この冬もどっかりと大雪が降りました。園庭の雪山は、近年にない大きな山です。子どもたちのそり滑りの歓声を想像してみてください。尻滑り、米袋のそり滑り、スーパーマン滑り、ブルーシートで多人数の一斉滑り、そりの立ち滑り・・・。楽しくなってきませんか? 雪遊びが初めての子は、当然見ているだけでビックリです。園庭にねっころがって、滑ってくる子どもたちの様子を見ていると、本当に楽しいものです。雪山の登り方にも、それぞれの工夫があります。登らなければ滑ることができないのですから必死です。山のずっと後ろの方から登ろうとしている子がいます。やっと登り詰めた頃には、30分もかかっている子がいます。それでも、一歩一歩足元を固めながら進んでいきます。急な坂を斜めから登る冒険野郎もいます。そして、あと一歩のところで、下までずり落ちてしまう子もいます。それでもあきらめず、またチャレンジしていくのです。その時々の子どもの表情から、心理を想像すると楽しくなります。

 そのような子どもたちの風景を見ている私に、オレンジ色の雪をカップに入れて大切そうに差し出し、「あのね、みかんシャーベットだよ。食べられないけど食べて。食べたらすぐに返して」と言う子がいました。色水遊びの雪バージョンをひたすら楽しんでおり、歓声の上がる雪山には、全く関心はないようです。どんな環境にいても、自分の一番関心のあることにのめり込んで、夢中で遊ぶことは子どもの特権です。
子どもたちは、このような遊びを通して、季節や雪質、気温などに気づき広く深く、雪の現象や雪の結晶、雲の様子、氷の実験と学びを楽しむのです。
時間をかけて、やっと山を登って滑ってきた子が、ねっころがっている私の背中に乗っかってきて、「お腹すいたー」と言いました。雪山で、どんなに体幹が鍛えられ、足腰が鍛えられることでしょう。そして、登るという目的のために、集中力と忍耐も鍛えられます。園庭の雪遊びは、なんて豊かなことでしょう。当然お腹が空き、食欲が旺盛になっていきます。子どもがやっと現実に戻る時です。どの顔も、満足してお母さんの作ったお弁当に向かいます。
園庭の端っこで、ごろんとしていると、今年も出会いました。氷点下の中、雪上を歩くとっても小さな虫です。氷点下で、雪上を呑気に歩いている虫なんて、なんてたくましいのでしょう。クモのような蚊のような形をしています。調べてみると「クモガタガガンボ」というのだそうです。私は、静かに観察しました。筋肉の足をもっています。羽はありません。歩くと早いです。毛羽だったものは付いていません。たくましい感じです。寒くはないのでしょうか。
小さな世界を覗いてみると、大きい者には、理解し難い世界があります。よく見ようと、どんどん近くに寄っていきましたが、この頃は老眼になっていますから、自然と顎と口に力が入り、少し遠くから見ている自分に気がつきました。そんな私の変な顔に気がついた子どもが「何しているの?」とやってきました。子どもの方に目を向けて、虫から目を逸らしたちょっとの間だったのに、クモガタガガンボはもういなくなっていました。どこにいったのか、どうやっていったのか、見失いました。
子どもたちの世界をこんな風に一つも見落とさないようにしたいものです。北海道ならではの雪遊びを存分に楽しむのも、そう長くはありません。節分がくると、氷の実験もできなくなります。春はもう近いです。この平和な世界をなんとか守り抜き、春までのあと少しを存分に楽しませたいと強く思います。
そういえば、春はクモガタガガンボは、どうしているのでしょう。夏には生きられないのでしょうか。それとも、冬の間、鍛えた体を、何かに生かしているのでしょうか。想像してみてください。大きく逞しく育つ小さな世界のことを。

*2月の予定*
1日 避難訓練(火災)、ゆり組個人懇談(9日まで)
3日 豆まき
8日 一日入園・説明会
17日 誕生会
25日 身体測定