一歩一歩前へ(NO.6)

  日替わりでしたが、子どもたちが楽しそうに体を動かす姿を保護者の皆さまが嬉しそうに見てくださる様子や、マママーケットで久しぶりに交流する保護者の皆さまの笑顔にほっとし、出産したばかりの方、この連休が出産予定の方と、うれしいニュースのあった9月でした。
私は、山積みの事務仕事を横において、久しぶりの4連休をゆっくり過ごそうと思っていました。私の夫は春からのコロナ禍の中、登山に目覚め、土・日曜ごとに、一人で早朝出かけて行きます。毎夜、地図を広げて藻岩山近辺の山々の様子を、楽しそうに話す顔は、すっかり日焼けし、だぶついたお腹周りも絞られてきたようでした。私は、登山には興味はありません。自宅が、藻岩山なのですから。子どもの頃から学校に通うのに、何度山を登ったり下りたりしてきたことでしょうか。小学生の頃は、同じ道に飽き、わざわざ道路ではなく、藪の中を漕いでダニに耳を食われたり、木に頭をぶつけ頭が破れたり、獣道と言われる道で、どんな獣が来るのかじっと待ってて、ついに来たおじいさんを獣と間違え、大声を出して叱られたり、思い出なら山ほどです。だから、結婚したら、平坦な土地に住みたいと願っていました。それから何十年も、未だに藻岩山に住んでいます。人の趣味はそれぞれですから、夫の趣味は尊重しています。ところが、連休初日に、「北海道で一番高い山に登ってみたくはないか?」と言うのです。「登ってみたくない」と、私は即答したのに、主人はニヤリとしていました。雨具を買い替えたいというので、登山用具の店へ付き合うと、私に丁度良い(サイズの)ズボンと雨具があり、夫にすすめられ一緒に購入しました。自宅に帰ると、リュックサックに、登山の用意が始まりました。1泊し、翌日は「楽しいドライブの旅」なのだそうです。私のリュックサックにも荷物が詰め込まれていました。嫌な予感がしました。「私は行かないよ」と再度伝えましたが、ロープウェイで上がって登山が始まること、嫌なら途中で下りてきてもいいことなど、ごちゃごちゃ言っていました。「早く寝なさい」と言われ、8時にベッドに潜り込んだものの、いつも夜中に寝る私には、早寝などできません。「だったら、もう出かけちゃおう」と夫に言われるまま、結局私たちは、夜の10時頃、旭岳を目指すことになりました。朝方、駐車場で仮眠をとり、目を覚ますと、駐車場は満員でした。ロープウェイでは、思い思いの格好をした登山者が列になっていました。「せっかくの4連休に、こんなにも、山に登りたい人がいるのかね」と思いました。ワクワクしている夫の横で、ひどく冷めた私の心がありました。
 「さあ登ろう!頑張ろう!あそこに見えているのは、頂上ではないよ。ここからは見えない。なんたって、北海道最高峰2291mもあるからね」と、夫はやる気満々。私は心が折れそうな自分を落ち着かせ、登山は始まりました。初めは、登りしかない道、水蒸気が上がっている火口付近は、足元を間違えると転がり落ちそうでした。暑くて、苦しい道が続いたかと思うと、急に霧が立ち込め、薄手のジャンパーが必要でした。もうだめだと思った頃、霧の切れ間から、眼下にナウシカの世界が広がりました。すでに紅葉が始まった森でした。頑張る力が蘇り、頂上を目指しました。しばらく行くと、雨が降ってきました。冷たい風が足元から強く吹き上げてきました。夫は、「このために買ったんだよ」と、嬉しそうに買ったばかりの雨具を取り出しました。後ろから上がってくる登山者に、何度も抜かれ、雨具を着たまま、やっと頂上につきました。霧のかかった頂上には、たくさんの笑顔がありました。お湯を沸かして、カップラーメンを作っている人がたくさんいました。驚きの中にいると、「さあ、縦走するぞ」と、記念写真もそこそこに、私たちは、旭岳ピークから残雪のある火山礫だらけの急な斜面を、転がり落ちないよう慎重に進んではまた登りを繰り返しながら、間宮岳を目指しました。膝がガクガクし、お尻も痛く、限界でした。それでも終わり頃、たくさんの高山植物に目を向けることのできる自分がいました。全行程12キロ、8時間の登山でした。「私にも登れた」と思いました。
人生を山登りに例える人がたくさんいます。本でも読んだことがあります。一晩、身体を休めながら、私も同じことを考えていました。自分に与えられた人生を自分なりに足元を固めながら踏ん張って行っても、いつも快晴が待っているわけではありません。登っている時は、快晴が暑くてつらく感じられ、急な霧雨にホッとするということもあります。強い雨が吹きつけても、雨具が助けてくれることもあります。着いたかと喜んでいても、まだその先があるということもあります。私にも、振り返ると、苦しく深い谷の時がありました。でも夢中で登っていたら、振り返る余裕はありませんし、それは危険でした。自分の描いた人生が与えられるわけもありません。いろいろな人が、私を通り過ぎても、どんなに抜かされても、一歩一歩自分の足で、自分のペースで、前に進むしかありません。
皆さんは、今、子育ての真っ最中です。山で例えたら、何合目でしょうか。息が苦しく転がり落ちそうな危険を感じた旭岳の8合目で、霧の切れ間から見えたナウシカの世界を、こひつじ幼稚園で、皆さんと一緒に見たいと思います。冷たい強い風、濃い霧、雨降り、苦しい登り道、この思いもよらないコロナの時、、、。保護者の皆さんと教師みんなで、どんな時も、どんな道も、前へ一歩一歩進んで行きたいと思います。夫は、翌日も登山に出かけていきました。私は、「今度、行くね」と言いました。

*10月の予定*
6日 感謝祭1日目 なにぬねのの日
7日 感謝祭2日目
12日 あそびましょ
15日 2021年度入園願書配布
16日 避難訓練(地震)
20日 たんぽぽ組誕生会
21日 つぼみ組誕生会
27日 なにぬねのの日
30日 2021年度わくわく広場受付

11月2日 入園願書受付