充実の一歩一歩 前へ一歩一歩(NO.6)

私は、夏休みの最後の週に、しようと思っていてできなかったことを大慌てで頑張るということが子どもの頃からの常でした。大人も後半になると、「気が向いたときね」なんて割り切ったふりをしながら、前日になって明日から始まる様々なことに思いを巡らしながら、あわてて今日一日だけはと、丁寧に過ごそうとするのです。
 その最後の日、飼い猫のまるちゃんが庭の散歩に出かけてすぐ、ベランダで私を呼んでいます。ネコ語では、「一緒に外に行こうよー」と言っています。気温が高くなってきた中、なんとなく草むしりをしながら付き合いました。仕切り直して、お茶でも飲もうとしていたら、近年山登りに夢中になっている夫が、「明日から仕事なのだから、体を動かした方がいいよ。藻岩山を登ろう」と言い出し、返事をする間もなく準備をしています。その勢いに乗せられて、夫のトレーニングコースである市民スキー場からの登山が始まってしまいました。ずっと急な坂道、石のガタガタな道、根っこだらけのグニャグニャ道が続きます。私にとっては苦しい、苦しい坂道です。こんな暑い時間でも、いろいろな年齢の人が頂上に向かっていきます。スピードハイカーも、のんびりトレッキングの人も、家族連れのハイキンガーもいます。
苦しくて休憩が増えたころ、「斜め、斜めにジグザグ歩きをすると疲れないよ」という夫のアドバイスは半分しか聞こえてきません。私は、ゴールが見える直線コースが大好きですから。
休みながら足元を見ると、ゲジゲジ虫が通り過ぎました。しばらくして茶色のヤスデもイモリも見つけました。みんな一直線ではなく、ジグザグ歩きや地面のデコボコに逆らわず歩いていきました。弱い小さな生き物はこうして逞しく生きるすべを心得ているのかと考えさせられました。私は、スピードハイカーにはとてもなれません。5合目までと思っていたら、後ろから「一歩一歩だよ」と夫の声が聞こえました。
こひつじ幼稚園のこの3年は、一歩一歩、ゆっくり歩んできました。教師も、憤りを抑えながら過ごしていました。保護者の方がイライラする時もありました。それでも、一歩一歩ゆっくりと歩みを続けてきました。
今年も幼稚園のリンゴの木に、リンゴの実がたくさん実りました。包丁で切ってみたら、虫に食べられていました。子どもたちは、「虫がおいしいって言ってくれているんじゃない?」「腹ペコ青虫じゃない?」など、思い思いに言葉にしていました。虫に食べられた所を包丁で削ぎながら、食べてみました。子どもたちは、「もっとください」「おかわりください」「甘くて酸っぱい」「あましょっぱいっていうんじゃない?」など、楽しい会話が続きました。皮をむいている私の隣で、種を集めている子がいました。「これを土に蒔くと、もっとみんなが喜ぶことになる」と言いました。
子どもたちも、こひつじ幼稚園の環境を最大限生かしながら、友達と楽しみ合うことを心から楽しんでいます。その時々に逆らわず、その環境を受け入れながら、強く生きることを大事にする子どもたちにも教えられます。
2学期も充実した日々を過ごさせることをお約束します。時にジグザグ、もしかしたら、ゆっくりすぎて、分かりづらいことがあるかもしれませんが、子どもたちの充実の一歩一歩であり、前へ進んでいく一歩一歩であるその道を、教師みんなで支えていきます。よろしくお願いします。

*9月の予定*
1日 つぼみ組学級懇談会
2日 たんぽぽ組学級懇談会
5日 ゆり組学級懇談会
12日 あそびましょ・おはなししましょ(2023年度見学説明会)
14日 運動会
26日 あそびましょ
27日 なにぬねのの日
30日 誕生会