希望の明日(NO.7)

運動会が終わり、「あー、楽しかった!」という教師たちの言葉を聞き、保護者の皆様の感想を読ませていただき、静かに子どもの数だけ何通りもあった物語を思い出しています。
翌日から園庭では、年少組は年中組の、年中組は年長組の運動遊びにチャレンジしています。年長組は、まだまだ熱いリレーが続いています。「さて、今日も運動会するかな」とか、「レッツゴー!レッツゴー!」という声が聞こえてきました。なんと、ママたちを真似した熱いチアガールも出現。幼稚園は、いつでも運動会が始められます。

衝撃を受けた言葉があります。
年中組の女の子が、「先生、私とっても速くなったの。見たでしょ? でも、本当はもっと速く走れるはずなの」と、ひと走り後、肩で息をしながら私を睨みつけ、「どうしたらもっと速く走れるのか」を自分の心に問うているようでした。短いけれど静かな時間でした。思いついたように「もう一回走ってくる」と可愛くニッコリして、スタート地点にならび、再び前に向かって真剣な顔に戻るのでした。
自分の実力はこんな程度ではないと、自分の力を信じて疑わないこの言葉に驚いたのです。様々な運動遊びを通して、自分への大いなる自信と素晴らしい自分だと思える自分の明るい未来を感じたのだと思いました。

初めは子どもたちの中にも、「誰に勝った」「誰には負けない」「一等がいい」といった、ごく普通の気持ちが生まれます。しかし、だんだんチャレンジをしていくうちに、「本当の私の力」に気づいていくのです。そして、年長になると自分の力を「仲間のために使う」「自分より弱い友だちに力を分けよう」というように育っていきます。
幼稚園の運動会は、すごい技術を見せる場でも、必要以上に競わせる場でも、先生に言われたようにみんなと同じくでき、はみ出さない子どもの姿を見せる場ではないということです。そしてそれは、普段の幼稚園の生活がそうであって、それぞれの得意が生き、悔しい思いもたくさんして、やりたいことがごく当たり前に主張でき、自分の思いがいつでも発表でき、仲間とぐちゃぐちゃする時期を経験しながら、心地よい関係を喜びとする心を育てていく場であるのだと考えます。
保護者の皆様の感想を読ませていただき、このことを多くの保護者の皆様がご理解してくださっていること、温かい気持ちでひとり一人を見つめ、去年と違う我が子に気づき、その道のりを喜んでくださったことは私たち教師たちの喜びでした。

さて、上記の年中の女の子の話に戻ります。「わかる」ということは、確かに「わからなかったことが分かった」ということです。チャレンジをしてみて自分の力はすごいんだということが分かったのです。「わからないこと」とは、やってみたら「わかるということ」に確信しうる力を与えてくれるものだということです。さらに希望をもつことだとも言えます。人は経験世界の中での実践を通して、すでに知っていることを改めてわかるのであり、納得するのです。そしてそれが新しい経験世界を開いてくれる、つまり新しい自分と出会うことだと思うのです。幼稚園生活は、このことが繰り返し経験できることであってほしい。たくさん身体を動かす運動会の経験を通して、人格形成の時にしたいと願うのです。

運動会の翌日、小学校5年生の卒業生6人が幼稚園で待ち合わせしたと言ってやってきました。その中の子どもが、学校生活に悩みがあることを保護者から聞いていました。本人は幼稚園に来た喜びに満ちていました。園庭で、楽しく過ごした後、帰りに少し話をしました。「学校に行ったらいろいろな人がいるでしょう」と。
「愛がない人もいる」「学校の先生なのに、尊敬できない」など、現状を言った後に「自分の心は自分で決めるよ」「自分の考えはちゃんと言えるよ」「大丈夫、また幼稚園に来るよ」と希望を伝えてくれました。私も、「堂々と、正しく過ごしなさい。明日は新しい自分だよ。いつも応援してるよ」と言って別れました。強く頷いていた子どもたちの目が印象的でした。幼児期に、このように経験した子は、逞しいのです。

別れた後、幼稚園の子どもたちを思い浮かべました。友だちの頑張りをライオンみたいに雄々しいと誉め讃える年長児は、「⚪︎⚪︎君、ライオンみたいにカッコよかった。すごくなったと思った。俺みたいだ。」と。
「大きくなったらボッコ持って走る人になる(リレーのバトンのこと)」と、興奮して教えてくれた年少児もいました。
みんな、新しい明日に、新しい自分を重ね、希望にあふれています。私たち教師も、子どもの心を明日へ太くつなげていきます。

*10月の予定*

天気の良い日に遠足を計画します♪
10日 あそびましょ
11日・12日 感謝祭
13日 入園願書配布、誕生会
20日 避難訓練(不審者)
26日 たんぽぽ組、ゆり組学級懇談会
27日 わくわく広場受付、つぼみ組学級懇談会