ありのままで(NO.9)

 私たちの人生には、いくつかのピンチが必ずあるものです。すんなりと、何事もなく歩いてきた人は、おそらくいない事でしょう。特に人生の岐路に立った時、どのような選択をしたらいいのか、どのような自分であればいいのかを思い悩んだ経験がおありでしょう。私も60年(ちょっとサバ読んでいる)を振り返るとあの時が岐路だったのだと後から思うことがあります。誰の意見も耳に入らず、自分で決めて突き進んだ道は、険しすぎて後悔したこともあります。そして、幼稚園の教育の中でもピンチは起こります。

「子どもたちには、運動会で学んださまざまな経験を生かし重ねられる次の経験を」と、先生方と練り上げていました。子どもたちがそれまでいろいろな事を楽しみ、自分が本当にやりたいことを決めて、発表会という目標に向かい始めた時でした。しかし、こひつじ幼稚園も様々な教育機関と同じように、子どもたちも教師も、アデノウイルスやインフルエンザ・わからない高熱に襲われました。やっと再開した日も年中組は11名の欠席です。それでも、いる子全員で優先生の指導のもと、みんなで熱くうたを歌いました。そして、やりたいことをステージで発表し合いました。どの子も休園後の友だちとの再会が楽しそうです。「ウイルスったら、本当に怒ったからな。いい加減にしてよ」と、目に見えないウイルスに抗議している子もいました。

放課後、「なんだか発表会が楽しみ。いい感じだ!」と彩花先生がさわやかな笑顔で言いました。
「大丈夫かな。一度も子どもたちがちゃんと揃っていないから心配だ」という大ピンチの思いは、どの教師たちの心の片隅にもあったはずです。教師たちの体調も万全ではありません。しかし、彩花先生のこの言葉に職員室の空気が確かに変わりました。
そうです。生活発表会は、生活の発表なのです。「上手に」「揃って」など、カッコつける必要はありません。生活を観ていただく事が大事です。そしてそれは、自分でやりたかったものを喜んで発表する姿であればいい。迷いに迷って、やりたい事を見つけた子がいます。悩みや迷いを乗り越えた子どももたくさんいます。もしかしたら、ぶっつけ本番の子もいるかもしれません。何より、できないことではなくできることを考えよう。ピンチを前向きに、捉えられることは、明るい未来の始まりです。

聖書のマタイによる福音書6章に「明日のことまで思い悩むな。明日のことは明日、自らが思い悩む。その日の苦労は、その日だけで十分である」
と書いてあります。起こるかどうかもわからない先のことのために、心を消耗させるのは、無駄なこと。その力を今日のために注げば、明日はきっと良い日になるはずですと言う意味があります。
臨時休園の日「あーつまらない」と言ってばかりの私でしたが、他の先生方は、黙々と、今日の仕事に励んでいるのでした。尊敬します。
私の大好きな赤毛のアンはいつも語っていました。「今日は終わり、明日はなんの失敗もしていない新しい一日がやってくる」と。

お熱の子どもたちの身体が守られますように。お母さんもお父さんも、子どもたちも教師たちも、新しい一日を精一杯、新しい心で、生きられますように。

*12月の予定*
5日 誕生会
7日 アドベント第3週
8日 わくわく組・広場学級懇談会
14日 クリスマス会
15日 終業式
16日 冬休み(~1月21日まで)
18日・19日 お泊り会