一人ひとりの物語(NO.5)

一学期のこひつじ幼稚園の生活はいかがだったでしょうか。保護者の皆様には、多くのご協力とお支えをいただきましたことを深く感謝しています。
さて、この一学期、私たち教師は、コロナ感染対策から少し離れ、許される限界ギリギリの開放感を実感しながら教育ができました。この学期に育てたい子どもの姿に真剣に向き合い、更に意識して子どもたちが集団でいる喜びを味わわせることができたと実感しています。「私」「みんなと私」「みんなの中の私」「私の在り方」を遊びの中で一つでも多く学ばせたいと頑張ってきたつもりです。

 夏になると、遊びが更に豊かになっていきました。園庭では、小さい子たちがエンビ菅の坂道から繰り返し水を流していました。小さなコップで、バケツで、スコップで。その度に水の行方を確認しています。自分だけではなく、興味のある仲間が集まってきました。急に自分が中心ではなくなり、否応なしにコミュニケーションが生まれます。我慢したり、口で言い負かしたり、泣いて訴えたり、諦めたり、順番が生まれたりしました。
また、ある日は、三輪車の後ろに、自分の頭より高く牛乳カートを積み、バランスを取りながら、運転しています。まるで、ウーバーイーツの荷物の10段重ねを運んでいるかのようです。顔をみると、大満足の笑顔です。カーブで上2個の牛乳カートが落ちました。「危ないよ」と大きい子に言われていました。それでも、積み直して用心深く前に進みました。顔を見ると真剣な顔になっていました。
また、来る日も来る日もひとりで、大きな自転車を練習しているお姉さんがいました。その頑張りに気づいた友だちが自転車に乗れるコツを教えていました。だんだんと熱が入っていきました。友だちに励まされ、やっと乗れるようになると、学級のみんなが喜んでくれました。それが自信になり、夏祭りのプログラムは、「自分たちの素敵を発表しようよ」と、その子が提案をしました。
このような遊びの様子は、いつまでも話せる程です。

 でも何よりも大事なことは、夢中になっている子どもの姿、試したり考えたりしている子どもの姿を教師が見取ることができるか、または、その遊びの様子に価値や意味を理解できるかということです。そして更には適切に支援することができるかという教師力が必要です。そのためには、子どもの目の動き、指先などの動きを見取り、楽しんでいることへの深い共感と、子どもの心に関心を寄せる必要があります。
子どもの「ふ〜ん」「そっか」「やっぱり」「なんで」「どうして」といったつぶやきを聞き逃さないことが大事です。一人一人の思いが違います。この子の思考やこの子だったらこの展開をと、教師は推論を働かせ、その後の展開に魔法のふりかけ(教師の支援)をかけていくのです。ひとり一人、違う味のふりかけです。ここに「学び」が生まれます。例えば、お姉さんの自転車のチャレンジは、教師が見守り、学級みんなで、彼女の努力を讃え合うことによって、自分から次の希望を見出していった、というふりかけがあります。教師の支援が光るところです。どの子どもも、神さまからその子にだけ与えられた賜物を持っています。賜物を活かしていきたいものです。

今後も、「私」「みんなと私」「みんなの中の私」「私の在り方」を丁寧に見取り、教師がひとつになって、子どもの育ちを伝え合い、話し合い、方向性を見出し、すすんでいきたいと思っています。
我が子が1学期の経験から2学期にどのような物語を紡いでいくのか、楽しみにしていただきたいです。
皆さま楽しい夏休みをお過ごしください。