思いを言葉で(NO.4)

新年度が始まってから、3ヶ月が過ぎようとしています。ご主人の急な転勤の為、お引越しをしてきた方がおりました。札幌の生活に慣れてきましたでしょうか。新年度、新たな幼稚園生活が始まり、新たな環境を心配した方もいらしたことでしょう。みんな色々な思いがおありだったことでしょう。それでも、3ヶ月が過ぎようとしています。幼稚園は、子どもたちが新しい環境を楽しみ、安心の場所であることをゆっくり自分のペースで理解できるように、心を開放していかれるように過ごしていきました。そして、子どもたちが自分の居場所を見つけた頃、自分のことだけではなく、相手の思いに気づかせていきました。

 年少でしたら、集団の決まりを学んでいきます。話をきくとはどういうことか。自分はどうしたらいいのか。みんなで歌うことは素敵なこと。みんなで絵本を見るのは楽しいこと。名前を呼ばれたら返事をするといいことやみんなの中の自分を心地よく感じていきます。その中で、集団の決まりを、日常の生活の営みの中で気づかせていくのです。「大事なお話ししようと思ったのに、こんなにうるさかったら言えないよ」と、一番信頼できる担任の気持ちを伝えつつ、相手の思いに気づかせていくのです。決して「静かにしなさい」「やめなさい」などと言ったりはしません。子どもが相手の思いに気づき、自分の在りようを自分で決めていくのが「本当にわかる」ということだと思います。
 年長でしたら、自分のことばかり主張する友だちを疎ましく思い、冷たく厳しい表現をした子に、「この友だちの姿は、あの時の君と同じ姿だ。君の友だちはあの時、君に冷たく厳しかったか」と、担任は具体的に伝え、心に迫っていきます。友だちを通して、自分の表現の仕方を振り返り、自分の表出の在りようを学んでいくのです。そのようなことを繰り返し味わわせていく3ヶ月でした。
 神様からもらった一つの大事なお口をどう遣うか、心をどう遣うか、大人の都合のいい子を育てるのではありません。大事なことは自分で決めるのです。その過程にいるのですから、間違ってもいいのです。私たちは、その失敗も学びなのだとゆったり捉えていきます。
 先日は、遠足に行きました。楽しい遠足でした。私は、車椅子を押して行きました。年中組の男の子が、足を折ってしまったのです。お医者様が、車椅子で遠足に参加してもいいと言うのでしたら、今はそれがこの子のありのままの姿です。当然受け入れます。帰りはどの子もクタクタで限界ギリギリです。そのような中、年長の女の子が私と一緒に車椅子を押してくれました。そして、自分に言い聞かせるようにこう言いました。
「強い足でもダメな時はある。でも今は、私は自分を発揮する時、⚪︎⚪︎君は発揮しなくていい時。車椅子が発揮してくれているから大丈夫。」車椅子の子が「椅子、頑張れ!」と呟きました。
 女の子は、言うことによって自分を鼓舞したのでしょうか。歩けない年中の男の子を気遣ったのでしょうか。安心させたかったのでしょうか。
 車椅子の子にとっては、車椅子に感謝したのでしょうか。自分は女の子に大事にされていると感じたでしょうか。子ども同士の素敵なやりとりに思い合う事、励まし合えることを表現できる力は、互いの関係を豊かにさせることだと教えられます。
 また、翌日は身体測定でした。遠足で頑張れた強い体を計測するのですから、みんなウキウキ自信満々です。一人一人の体重と身長を測り、大きくなったことを確認し合う大事な時間でした。その後、子どもたちは野菜の苗を植えるために、畑おこしの作業をがんばっていました。作業を終えた子に廊下で会いましたので、「畑仕事、お疲れ様です」と声をかけると、「そっちこそお疲れ様です。さっきは、背の高さを測ってくれてありがとうございました」と、自信にあふれ、大人びた言葉が返ってきました。私を労ってくれたのです。遠足で自信をもち、身体測定で自分の強さを確信したからでしょうか。自分を肯定できる力は、その子をより大きくさせます。私は、エネルギーをもらいました。
午前中、事務仕事を必死でこなし、なんとか子どもの片付けの時間頃に、子どもたちの中に行けた時のことです。時は昼過ぎです。年中組の子が私の正面にすっと立って、きれいな瞳で私を見つめ「あ、おはようございます」と、挨拶してくれました。私は(芸能人か)と心の中でツッコミを入れながら、「おはようございます」と返しました。今日、この子と会うのは初めてでした。子どもはそのことをわきまえて、挨拶してくれたのだと感じました。子どもの思いは深いのです。そして、必ず理由があります。
 子どもは様々な表現をする中で、友だちと心がつながる成功体験をしたり、気まずさを味わったり、自分の表現に後悔をしたりしながら生活しています。大事なことは、自分の心にある思いを表現できる環境なのです。表現は自由です。音楽になり、絵になり、運動になり、全身全部を使って自分を表現できる手段がたくさんあります。私たちは、その表現できる環境を整えつつ、1学期の締めくくりの7月は、もっともっと、自分を表現していく楽しさを味わわせたいと思っています。自分を肯定的に自信をもって生きる道を見つけさせたいからです。
 遠足の帰り、強い風に揺れているヨモギを見つけた子が言いました。
「よもぎちゃん、寒そうね。お餅になったら、あったかいよ。ふわふわでさ、3回目のヨモギ餅を作る計画してみる?」とヨモギとお話ししてました。さて、ヨモギは何て答えたのでしょうか。自由って素晴らしい。

*7月の予定*
4日 なにぬねのの日
6日 わくわく広場、わくわく組懇談会
7日 誕生会
10日 あそびましょ、おはなししましょ
13日 ゆったりしましょ
19日 夏祭り
21日 終業式・わくわく広場終業
24日・25日 お泊り会

*8月の予定*
21日 2学期終業式
22日 わくわく広場2学期はじまり
24日 誕生会、なにぬねのの日
25日 避難訓練(地震)
28日 つぼみ組学級懇談会
29日 たんぽぽ組・ゆり組学級懇談会
30日 フリーマーケット